名古屋家庭裁判所 昭和41年(少)4824号 決定 1966年9月14日
少年 A(昭二六・七・二七生)
主文
少年を中等少年院に送致する。
理由
(非行事実)
一、少年は、他の一〇数名と昭和四一年八月○日午後九時四〇分ごろ、愛知県知多郡○○○町大字○○字○○○××番地国立○○医療少年院を集団脱走し同日午後九時四五分ごろ同所大字○○字○○×番地○田○市方前路上を逃走中たまたま通りかかつた同町大字○○字○○××番地工員○部○吉三五歳の運転する普通乗用自動車(マイクロバス)を目撃するや、他の被疑者と共謀して同人の自動車を強奪逃走しようと決意し、かねて用意の棒切れような物を振りまわして、同自動車の前面に立ちふさがつて急停車させ、運転台扉および座席の扉をひきあけて同車両に乗りこみ運転台にいた○部○吉の頭、背中、腕、足等を所携の棒切れにて滅多打ちに殴りつけ、さらに同人を車外にひきずり降ろして、脅迫畏怖させその反抗を抑圧して同人の管理する○○鉄工所所有の普通乗用自動車(マイクロバス)一台時価一五万円相当を強奪し、その際前記の暴行によつて○部○吉の右前膊中央部背部第八第一〇胸椎根部付右第四指第一関節部および右耳翼後部等に全治二〇日間を要する打撲兼擦過傷を負わせ、
二、少年はI、同H、同M、同K、同L、同B、同C、同F、同Gは愛知県知多郡○○○町大字○○字○○○××番地所在の○○医療少年院に収容されているものであるが昭和四一年八月○日午後九時三〇分ごろ他の被収容少年数名と同少年院を南病棟から集団脱走するに際し共同して椅子、鉄棒、ゴミ箱、洗面器などをもつて同病棟の廊下窓、娯楽室の窓および出入口のガラス戸などを叩き同所のガラス戸七本、金網戸七本、教官宿直室のガラス戸二本、五室および六室出入口の金網戸各一本を損壊し、
三、少年は他一〇数名と昭和四一年八月○日午後九時四〇分ごろ、愛知県知多郡○○○町大字○○字○○○××番地国立○○医療少年院を集団脱走し同日午後九時五〇分ごろ、同町大字○○字○○○××番地先を逃走中たまたま通りかかつた同町大字××字×○××番地共同牧場職員鈴○裕二三歳の運転するマツダ軽三輪自動車を目撃するや他の被疑者と共謀し同人の自動車を強奪逃走せんと決意しかねて用意の棒切れ様のものを振りまわして同自動車の前面に立ちふさがつて急停車させこれを取り囲み口々に大声で降りろ、降りろと怒号し運転手鈴○裕二三歳及び助手席に同乗の鈴○文○二八歳の両名の右肩をつかみ引張つたり、足蹴にする等の暴行を加えて同人等を脅迫しその反抗を抑圧して鈴○裕が右腕にかけていたショルダーバッグ一個(内容品赤色手帳外一〇点)見積合計金一万一、二九〇円を強奪さらに右鈴○両名を車外に放り出し共同牧場所有鈴○裕管理にかかるマツダ軽三輪貨物自動車(三名古屋○○○○○)一台見積五万円相当を強取したが、その際前記の暴行によつて右鈴○裕の右前膊部に全治三日間を要する擦過傷を負わせ、
四、少年は、他一〇数名と昭和四一年八月○日午後九時四〇分ころ、愛知県知多郡○○○町大字○○字○○○××番地国立○○医療少年院を集団脱走し同日午後一〇時ころ同町大字○○字○○地内○川橋を逃走中、たまたま右橋の下につないであつた同町○○字×××○番地漁業○藤○松(四五歳)所有に係る中古小船一双見積価格二万円位いを目撃するや、他の被疑者と共謀してこれを窃取逃走し
たものである。
(適条)
強盗致傷罪刑法第二四〇条、同第六〇条
暴力行為等処罰に関する法律違反同法第一条
窃盗罪刑法第二三五条、同第六〇条
(要保護性)
社会の耳目を聳動させた医療少年院集団脱走少年の一人であるが、幼稚な考えを抱き児童の域を脱せず本件も漫然として年長者のあとについて出たものであるが肺結核を患つている関係上一先づ中等少年院に送致するも結局医療少年院に移送するを相当と思料する。
諸般の情状により中等少年院送致に付するを相当と認め、少年法第二四条第一項第三号、少年審判規則第三七条第一項、少年院法第二条第三項を適用して、主文のとおり決定する。
(裁判官 鳥居松平)